RYOTA YAMADA

Thursday, October 22, 2015

食べ物




 日の出前午前五時、テント内にぶら下げた温度計は二度を指している。昨夜まで二晩過ごしたアシの上では氷点下三度を指していたので、やはり水をスポンジのように含んだアシの上より土の上にテントを張った方が暖かいようだ。
 二週間前に焚火で熱を入れた肉と魚が、いまだにおいしく食えている。腹の調子が悪くなるようなこともない。冷蔵庫など当然ないので、昼間の直射日光で暖められて、湿気を吸収するために米をフライパンで煎って乾燥剤にしたものを一緒に入れてはいるものの、それでもジップロックの中に密閉されてさらに防水バックの中に密閉された魚や肉がじっとりと汗をかいたりしている。普通の主婦ならば、それを見てもう捨てようと思うかもしれない。人間の体は意外と丈夫にできているのだなぁ、と感心する。
 野山の動物は土の上に落ちているものを平気で食べているのに、人間はそんなことをしたら病気になって死んでしまうかのごとく認識している。人間も動物も遺伝子的にはほぼ同じなのであるから、消化器官にも免疫系にも根本的に大きく違うところはないのだろうと思う。なのになぜ人間だけが弱いのかと不思議に思っていたのだ。きっと病気に対する耐性はあまり変わらないのだが、病気にかかる確率をどのように受け取るか、ということなのだろう。食品を製造する企業などは、万が一、それどころか一億分の一であっても食中毒を出せば企業生命にかかわるから保存料を使わざるを得ないし、食べる側の個人もその一億分の一の確率に当たって苦しい思いをすることに恐れおののくものだろうから。その点動物にとっては一億分の一の確率など意味をなさない。
 主食が一日あたり玄米二合とロールパン三個では、カロリーが不足しているのかもしれない。焚き火を探し集めていた時に、でこぼこして枯れ木が落ちる土の上で、足下がおぼつかずふらふらした。そして思考回路もあまり回らなくなった。
 飢えるというのは貴重な体験だな、と思う。
 そして夜の焚き火で米を炊くまで待てそうにもなかったので、テントの中でお湯を沸かしコーンスープを飲んだが、そのとき感じた幸福感。これもまた貴重な体験だなと思った。
 今夜からカロリーを増やそう。それまで寝て待とう。動物のように。


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