RYOTA YAMADA

Thursday, November 4, 2010

ご飯を炊くエネルギー その6 太陽

太陽のエネルギーを計算してみよう。

あまりにも身近な存在である太陽。薄暗い冬空の下で寒風に吹かれ凍えていても、突然雲を割り顔をのぞかせた太陽の光を体に浴びるだけで、たとえそれが衣服を通した間接的な接触であっても、瞬く間に冷えた体に熱が伝わり生き返る。こんなにも強い熱を感じることが出来るのだし、太陽はあまり遠い存在ではないような気がするが、いったいこの地球からいったいどのぐらい離れているのだろうか?

地球から太陽までの距離は、約1億5千万キロメートルだという。これだとピンと来ない。

地球から太陽までの距離は、地球の直径の約1万2千倍だという。地球をグルっと一周歩いたことはないから、これもいまいちピンと来ない。

では太陽まで歩いたら何日かかるだろう?計算してみると、人生80年として、161回分の人生を毎日8時間歩けば辿りつくようだ。なるほど、少し分かったような気にはなってくる。いずれにせよ、天竺より遠い遥か彼方の遠方である。こんなに遠く離れた場所で燃えていても、体が瞬時に暖まるほどの熱線を感じることが出来るのだから、太陽はどんなに激しい燃え方をしているのであろうか。

太陽は、木や石油が燃える現象とはまったく異なる仕組みで燃えている。太陽は核融合反応で燃えているのである。核融合反応というのは、原子力発電所や原子爆弾で利用されているウランやプルトニウムの核分裂反応と似てはいるが異なる反応である。

似ている部分とは、木や石油の燃焼のように一般的に物が燃えるといわれる現象が物質の基本構成要素である原子の組み合わせが変化するだけであるのに対して、両者共に原子自体が違う原子に変化する核反応であるというところだ。木や石油が燃焼する時に原子の組み合わせが変化するというのは、例えば、酸素原子・炭素原子・水素原子が組み合わさった木が燃焼すると、水素原子・酸素原子が組み合わさった水と、酸素原子・炭素原子が組み合わさった二酸化炭素に分解するということである。一方で原子自体が違う原子に変化するというのは、例えば、温度計に使われている水銀の原子が原子核崩壊して金の原子に変わることであり、金を人工的に作りだす錬金術と同じで日常生活ではあまりお目にかかることがない。

異なる部分とは、文字通りに分裂と融合である。核分裂反応は、ブヨブヨと振動している柔らかめのおにぎりがウランの原子だとすると、勢い良く飛んできた米粒が衝突しておにぎりが二つに分裂し、クリプトンやバリウムなどの全く異なる原子に変化すると共にエネルギーを放出する、というようなイメージである。まあかなり比喩的な表現ではあるけれど。それに対して核融合反応は、米粒1つで出来ている水素原子に別の米粒が勢い良く衝突してくっ付き、ヘリウムという名の別の原子に変化すると共にエネルギーを放出する、というようなイメージ。

核分裂反応は核融合反応に比べれば簡単に起こせるので、すでに原子力発電や原子爆弾に利用されている。何故かと言うと、ブヨブヨと振動してる柔らかいおにぎりだからとても壊れやすくて、ある分量以上のおにぎりを一箇所に集めておけば、勝手に核分裂反応を起こし始める。あるおにぎりが分裂して複数の米粒が弾け飛ぶと、弾け飛んだ米粒が衝突した近隣の複数のおにぎりがまた分裂して、そのとき弾け飛んだ米粒がまた別のおにぎりに衝突して……というように連鎖反応でねずみ算的に分裂するおにぎりが増加して、瞬く間に全てのおにぎりが分裂して一気にエネルギーを放出してしまう。このある一定量以上を集めるだけで自然に核分裂反応が始まるという単純なメカニズムが、いわゆるならずもの国家にウランが流出すると、技術力がなくとも核兵器の製造が可能であるという懸念に繋がるのである。

ところが核融合反応はとても難しい。多少無理が出てくるが引き続きおにぎりに比喩を求めると、米粒同士はお互いに反発しあう強い力を持っていて、米粒同士をくっつけるにはその反発力に打ち勝つだけの莫大な力と熱で圧縮しなければならない。原子爆弾の核分裂反応が作り出す瞬間的な力と熱で、僅かな時間だけ爆発的に核融合反応を起こすことには、水爆として成功している。しかしながら平和利用の発電用として永続的にゆっくり燃え続けるミニ太陽を地上で再現することには、何十年も研究を続けているが今だに実現していない。太陽の中心は1千500万度、2千500億気圧という想像を絶する環境なので、この核融合反応が起きているのである。

少し話が脱線するが、ここに僕は「太陽の中では核融合反応が起きていて……」と、まるで実験室で観測した結果判明した明確な事実のように書いているが、いまだかつて誰も太陽まで行って調べてきたことはない。それでも人類は、相対性理論や量子力学を生み出すことにより、遥か彼方の太陽中心で起きている現象を解明してしまうのだから、「考える」という能力は奇跡であるとしか言いようがない。

太陽の核融合反応は主に陽子-陽子連鎖反応であり、水素からヘリウムへと変化する際に、質量の0.7パーセントが失われてエネルギーに変換される。したがって15グラムの太陽を持ってきてご飯を炊くと、太陽が0.105グラム軽くなって、その分だけ熱が発生する(実際には、15グラムだけではあまりにも軽すぎて太陽として燃えないのであるが、核融合のスケールを知るのが目的なのでご愛嬌)。その0.105グラムから発生する熱は、
の式でもとまり、答えは22億5千800キロカロリー(2,258,000,000キロカロリー)となる。ご飯を1合炊くのに必要な160キロカロリーで割れば、朝昼晩と1合ずつ食べて、人生80年生きるとして、人生161回分のご飯が炊けるのである!


地球の33万倍も重い太陽がこれだけ激しく燃えているのだから、161回分の人生をかけて歩かないと到達しないほど遠く離れた太陽から届く熱が、まるですぐ傍らで燃える焚き火のように暖かく感じられることが納得できる。

しかし、15グラムの太陽で炊けるご飯が、人生161回分。そして太陽までの距離が人生161回分!もしかして、何か新しい物理法則を発見したのか!なわけがない、ただの偶然……。

そして、ウランの核分裂反応よりも太陽の核融合反応の方が、約7倍のご飯が炊けることも分かる。

もし核融合炉が完成したら、燃料の重水素は海に無尽蔵に存在する。原子力発電所で使われるウランのように、100年以内に使い果たしてしまうというような心配がなくなる。もし核融合炉が完成したら、原子力発電所が持つどんなに技術が進んでも拭い去ることのできない不安感が払拭される。なぜならば、核融合は高温と高圧力を維持しないと反応が続かないので、もし核融合炉が壊れても反応がストップするだけで暴走することがない。原子力発電所の、暴走した核燃料が地面を溶かしてアメリカから地球の反対側にある中国まで落ちていくという、チャイナ・シンドロームのような揶揄がなくなる。もし核融合炉が完成したら、生成される放射性物質も、原子力発電所と比較すれば遥かに弱い。まさに夢の技術なのであるが、やはりミニ太陽を人工的に地球上で再現するのはとても難しいのである。もし完成することがあれば、人間の精神は神もしくは宇宙の神秘といわれる領域に近づくのかもしれない。

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