RYOTA YAMADA

Sunday, September 26, 2010

ご飯を炊くエネルギー その1 灯油

僕はカヌーが好きである。何日もかけて野営しながら川を下るのであるが、道中の食料とャンプ道具は全てカヌーに積みこむ。二人用のカヌーを一人で使い、空いたスペースに荷物を詰め込むのだが、積載量に上限が出てくるので、おのずと補給なしで行動できる日数は制限されてくる。テントや寝袋や炊飯道具などは、一泊二日だろうが一週間だろうが同じような装備を使うので、日数が増えても重量が増えることはあまりない。日数に比例して増えるのは、食料と、食料を調理する燃料である。魚を釣って食料を補給したり、焚き火を調理に使って燃料を節約したりすることはある程度できるが、その土地に住みつくのではなく移動しながらの旅であるので、持参した食料と燃料に多くを頼らざるをえない。したがって何日もかけた大掛かりな計画をたてる時には、食料と燃料の重量と体積の計算が重要になってくる。

そこで、ご飯を1合炊くにはどのぐらいの重量の灯油を消費するのか、小雨降る気温20度の秋の夜長に、我が家の玄関先で実験してみた。灯油やホワイトガソリンを燃料とするアウトドア用のバーナーを使い、風を避けるためにバーナーの周りをアルミ板で囲って、チタンのコッヘルでご飯を炊くのに要した灯油は15グラムであった。容積に換算すると約19ccとなる。



朝にご飯と味噌汁を食べる人は、朝昼晩とそれぞれご飯を1合づつ消費し、1日に合計3合を食べると仮定しよう。3合のご飯を炊くのに必要な灯油は約56ccとなるので、1年分となると約21リットルを燃焼させることになる。この21リットルという量は石油のポリタンクに入れると1.2個分であるが、それがいったいいかほどの量なのか、環境負荷の一つの指針である二酸化炭素を基準にして、車の燃料であるガソリンと比較してみよう。

灯油は、製造するときに1リットルあたり約160グラムの二酸化炭素を排出し、燃やすと1リットルあたり約2.5キログラムの二酸化炭素を排出する。ガソリンは、製造するときに1リットルあたり300グラムの二酸化炭素を排出し、燃やすと1リットルあたり約2.4キログラムの二酸化炭素を排出する。

1人分のご飯を1年間炊くのに、灯油を21リットル燃焼させて、約54キログラムの二酸化炭素を排出することになる。同じ54キログラムの二酸化炭素を排出するガソリンは、約21リットルである。

車の燃費をプリウスあたりを基準としてリッター23キロメートルとすると、21リットルのガソリンがあれば420キロメートル走れることになる。なんと東京と静岡県掛川市を往復するだけで、1年分のご飯が炊けるのである。まあ、容易に想像できる範囲の話ではある。四畳半の狭い部屋の中に車のエンジンを設置して7時間もぶん回し続ければ、灼熱地獄となるであろう。その熱でご飯米1年分が炊き上がるといわれれば、納得できるような気がしてくる。

我々日本人は、いや先進国の人達は、いとも簡単に、そして気楽に東京と掛川市の往復などやってのけるが、発展途上国で日々食事を作るために薪を拾い集めている人たちにとっては、食事一年分の価値があると言ってしまっても過言ではないであろう。そして、機械による移動は人間の文明を築き上げた偉大なる発明であり、また壮絶なる破壊であるとも言えよう。